白川昌生さんに聞く「ポスト・コロナ」の前橋とアート/「駅家ノ木馬祭」にみる「芸術の力」

私たちの生活や経済に大きな混乱をもたらした新型コロナウイルス感染症。

国は5月25日に「緊急事態宣言」を全面解除し、群馬県内でも感染拡大に落ち着きが見えつつあります。

未知の疫病という困難を、私たちはどう受け止め、共存していったらよいのでしょうか。

そのヒントとなるアートプロジェクト「駅家(うまや)ノ木馬祭」が、群馬県前橋市にあります。

「駅家ノ木馬祭」の作者である白川さん

「駅家ノ木馬祭」は、前橋市を拠点に活動する現代美術家、白川昌生(よしお)さんが2010年に創作した物語を基にしたお祭りです。

2011年からは、作中の弁財天の予言を実現する形で、カラフルな神輿や木馬で街中を練り歩くイベントとして開催されてきました。

困難に立ち向かう想像の物語、4月29日に前橋で「駅家ノ木馬祭」

物語の舞台は、幕末から明治期の前橋市。疫病や自然災害などの困難に立ち向かう人々と、街の再生を描いた物語は、「コロナ禍」に苦しむ現状とも重なります。

困難な時代を生き抜くための「芸術の力」について、白川さんに取材しました。

(聞き手=「いまここ」エディター・和田早紀)

困難に立ち向かう「芸術の力」

―5月9日の「木馬祭り」は、新型コロナウイルスの影響で例年とは違った形での開催となりました。

白川 春の「木馬祭り」は例年、神輿を担いで大蓮寺から「るなぱあく」、利根川河川敷までにぎやかに練り歩きます。

秋の本祭に比べるとピクニックのように楽しい雰囲気で、昨年は都内からも多くの人が参加してくれました。

「春の木馬祭」では人と人の距離を保ちつつ、利根川まで神輿を担いで練り歩いた=5月9日(提供:駅家ノ木馬祭実行委員会)

人が集まるイベントには賛否もありますが、「木馬祭」は物語の上では疫病退散の意味もあります。

マスクをしたり、人と人の間隔を保ったり、感染予防に配慮しつつ、今年は「コロナ退散の儀」として実施しました。

社会が変わるには、まず文化から

―「駅家ノ木馬祭」が始まった2011年は、東日本大震災の起こった年です。

未曾有の自然災害に日本全体が委縮し、自粛ムードや不安感も長く続きました。

白川 東日本大震災後は自粛の動きが強まり、文化活動を思うようにできない時期がありました。

自粛も一定期間は必要かもしれないが、落ち着いたら、むしろ芸術活動を盛んにすることで、生活する上で力が湧いてくると思います。

コロナ後の社会を考えると、経済対策ばかりに目が行きがちですが、文化と経済はつながっています。

文化的な物の考え方、つまり価値観が変わると、経済の構造も具体的に変わってきます。

ブックバー「月に開く」にて、白川さんを取材しました

例えばパソコンの誕生で文化や生活様式が変わったことで、新しいお金の取引や経済活動が生まれました。

経済より先に価値観が変化することで、新しい経済が生まれるのです。

絵画や彫刻といった分かりやすい芸術だけでなく、芸術を作り出すエネルギーこそ、生活や文化、経済を発展させていくのだと思います。

ドイツなどは、文化が経済をつくるという認識を国家が持っているから、新型コロナが流行した際も芸術支援を手厚くしているのでしょう。

―白川さんは「想像☆の力」の旗を街中に立てるアート活動を行っています。

その際、世の中の困難に向き合う際の「想像力」の大切さについて語っていました。

前橋にはためく「想像☆の力」

白川 新型コロナウイルス感染症は社会にとって大きなマイナスですが、自分たちの生活や社会について考える機会にもなります。

これまで当たり前だった働き方や消費活動というシステムが、本当に必要なのかを問い直すという意味で。

その問いを投げかけるのがアートの役割だと思うし、コロナ後の社会を考える上で、芸術が果たす役割は大きいと思います。

白川さんが制作した「コロナ退散」の旗は弁天通り商店街に展示されています

地域に密接したアートが求められる

―コロナ危機は、アート界にどんな影響をもたらすでしょうか。

白川 ポスト・コロナのアートがどうなるか。今、世界中のアーティストが議論しているテーマです。

グローバル化による市場の拡大は経済的な豊かさをもらたしましたが、新型コロナウイルスの流行によって、その不都合な面も浮き彫りになっています。

コロナ以前はグローバル化を前提とする社会でしたが、コロナ後はこの揺り戻しがアートや文化にも起きると思います。

「地産地消」ではありませんが、地域コミュニティーの中で必要とされるものを時間をかけて作っていく、生活に根差した文化活動が一層、求められてくるでしょう。

コロナ退散のステッカー(提供:駅家ノ木馬祭実行委員会)

―地域と密着したアート活動ならば、白川さんを始め前橋市には多くの実践者がいます。

ポスト・コロナの前橋とアートはどう変化していくのでしょうか。

白川 地域との関わり方はアーティストによってさまざまだから、「どう変わるか」と一概には言えないけれど。

さっき言ったように、地域固有の文化活動がより深くなっていくと面白い、と思います。

地域の中には、よく見ていくといろいろな問題があります。

若いアーティストは自分でしっかりと考え、地域の課題をさまざまな角度から掘り出し、表現してほしいですね。

コロナ後の地域の文化活動をもう一度、自分たちの手でつくるといっても、目に見える成果を短期間で求めるのは難しい。

10年とか長い時間をかけて、じっくり取り組んでいくべき課題だと思っています。

取材対応して下さった白川さんと、福西敏宏さん

 

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