県内高校に広がる「未来の教室」/自分の求める人生を知る対話プログラム

「好きなことだけやろう」「やりたいことが大事」―。世の中はポジティブなメッセージにあふれ、私たちに「何を求めて生きるのか」という問いを突き付けてきます。
でも「自分が何をしたいのか」が、まず分からないという人も多いはず。人生のサンプルが少ない高校時代なら、なおさらです。
NPO法人DNA(デザイン・ネットワークス・アソシエーション)は、そんな「もやもや」を抱えた高校生を対象にした教育プログラム「未来の教室」を開催。2013年から事業を始め、徐々に県内の高校で広がりつつあります。

少し先を生きる、センパイからの気付き 

5月21日には、高崎北高校(高崎市井出町、丸橋覚校長)で1年生約240人を対象に「未来の教室」が開かれました。DNAからは、対話研修を積んだ社会人や学生など約30人がボランティアスタッフとして参加。高校生の少し先を生きる先輩として、自らの体験談を披露したり、生徒の思いに寄り添った対話を行いました。

授業内容について打ち合わせする先輩ボランティア

進路選択を控えた高校生が先輩の体験談を聴く、というと、いわゆる職業講話が思い浮かびます。「未来の教室」も趣旨は同じですが、講義形式ではない対話を重視したスタイルが特徴です。

今回の授業は「あなたが探究したいテーマ」について話し合いました。まずは先輩の体験談を聞き、その内容について同じ班の先輩や生徒同士で話し合うという流れです。

班ごとに先輩や生徒同士で対話し、自分の気持ちと向き合う

いきなり「探究したいテーマは」と聞いかれたら、大人でもすぐに答えられないかもしれません。「未来の教室」は対話によって、自分がどんな人間で、何が好きか、といった内面の探究を重視している印象を受けました。
自分の本当の気持ちを知らなければ、その先にどんな未来を描くのかを決めることはできませんかから。

例えば「好きなこと」の欄に「ゲーム」と書いた男子生徒が複数いました。
では、なぜゲームが好きかを話し合うと、その理由は人それぞれです。

ある生徒は「世界観にはまれるから現実逃避になる」
ある生徒は「強い敵を攻略できた時の快感がたまらない」

「ボードゲームは意外と勉強に役立つこともある」という意見も出ました。

一口にゲームが好きといっても、好きの根っこがどこにあるかは人によって異なります。それぞれの思いを言葉にすることで、自分が求める本当の気持ちに気付いていくのだ感じました。

先輩自身の多様性もはぐくむ 

生徒との対話は、先輩として参加するボランティアスタッフにとっても成長につながるといいます。先輩の一人で、ワーク・ライフバランス社のコンサルタント、新井セラさんは「未来の教室は多様な人や意見と出会うきっかけになり、自分自身の多様性を広げてくれる」と話してくれました。

「未来の授業」に先輩ボランティアとして参加した新井セラさん(左)

「未来の教室」は富岡、高崎、桐生を中心に導入学校が広がっており、これまでに県内で延べ20校で実施されました。
高崎北高校でも今回の「未来の教室」だけでなく、年間を通してDNAと連携した探究型のカリキュラムを実践しています。
丸橋覚校長は「生徒自らが課題を見つけ、解決を考える探究型の学びが社会から求められる時代。学校教育もこれに対応して、学びの在り方を考えなくてはなりません」と力強く語ってくれました。

高崎北高校の丸橋校長

私も群馬県内の公立高校出身です。群馬の高校は男女別学も多く、なんとなく保守的なのかなと思っていましたが、教育現場ではさまざまなチャレンジが行われているのですね。

「未来の教室」を手掛けるNPO法人DNAは、創業15周年を記念して、6月22日に高崎経済大学で「社会に開かれた学びカンファレンス」を開きます。
県内の教育界をけん引する方々を招いたシンポジウムや、教育にまつわるテーマの分科会など。
群馬の教育に関心のある方ならどなたでも参加可能です。
ぜひ一緒に、群馬の未来の教育について語り合ってみませんか。

「未来の教室」の導入や先輩の登録については、NPO法人DNAへお問い合わせください→HPはこちら

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